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2005年10月30日 (日)

インド中世神秘主義(2)

② カビール――宗派を越えた弟子たち


 カビール(生没年不明)はラーマーナンドの弟子である。彼は、15世紀にその生涯をおくったが、カビールの言葉はさらにはっきりと、宗教の形式を超えた世界を表現している。

『 おお神よ、アッラーにせよ、ラーマにせよ、私は、その名によって生きている。宗教の違いは、単なる神を呼ぶ名前の違いにすぎない。誰でも同じ神に祈っているのである』   (『ヒンドゥー教』151頁)

 カビールはイスラム教徒の職工の家に生まれ、彼自身も職工としてイスラムの教えを信仰していたが、ラーマーナンドの教えに直接触れたことで改宗し、彼の直弟子となった。

 しかもカビールは、伝統的な宗教生活である禁欲主義や独身主義を信ずることなく、結婚して息子と娘を育て、生涯一職工として生活した。

 いわば在家の信仰者だったにも関わらず、カビールのもとにはヒンドゥーとイスラム両教の大勢の人々が訪れ、彼の説く教えを聴聞し信仰したという。

 カビールにはおもしろいエピソードが残されている。

 それは、彼の死後のこと。

 ヒンドゥーとイスラム双方の弟子たちが、自分たちの流儀で葬式を出そうと言い争いになった。そしていざ葬儀を行おうと遺体の覆いをめくってみると、亡骸は跡形もなく消え去り、その替わりに花束が置かれていたという。そこで両派で仲良く花を分けあったと伝えられている。

 この伝説は象徴的である。

 各宗教の流儀による葬式とは、宗教における「周縁部分」にあたるが、宗教における中心的真理に立脚したカビールの信仰は、そのような「周縁部分」の次元に存在していなかったということである。

 残されて分けあった花とは、彼の残したコトバのことであろう。

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