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2005年10月30日 (日)

インド中世神秘主義(1)

① 神秘主義の主唱者ラーマーナンド

 ヒンドゥー教のなかでも、際だって宗派組織や聖典に依存しない系譜として、中世神秘主義の運動が挙げられる。

 彼らの宗教思想は、12世紀以降にインドに入ってきたイスラム教のスーフィズムによる影響などを受け、ブラフマンという名の究極的実在(実在者)を明確に中心に据え、瞑想による深い叡智によって把握した世界を、分かりやすい教えをもって展開した。

 これにより、ヒンドゥー教徒のみならずイスラム教徒、さらにはシク教徒にも大きな影響を与えた。

 ヒンドゥー教で、中世神秘主義の主唱者となったのはラーマーナンド(1370頃~1440頃)である。彼の残した詩は、ヒンドゥー教を母体として誕生したシク教の聖典、『グラント・サーヒブ』の中に混入して現在に伝えられた。それは次の言葉である。

『どこへ行っても、(礼拝の仲介となる)水や石がある。しかし、そこに顕現し、それらを満たしているのはあなたである。人々が「ヴェーダ」のなかにあなたを探そうとしても無駄である。
 私の真実の師よ、あなたは、私を誤謬と幻想からめざめさせてくれた。あなたは幸いなるかな。ラーマーナンドは、その師ブラフマンのなかに消え入ってしまった。すべての束縛を解くのは、師の言葉である。 (『ヒンドゥー教』149~150頁)』

 この言葉の主、ラーマーナンドは、ブラフマンという超越的実在(実在者)は遍在するものであり、「ヴェーダ」に記された文字の中にブラフマンが居るのでないことを明確にした。

 彼の教えを端緒とするインド中世神秘主義では、従来のヒンドゥー教から、

「知識による道(ジュニャーナ・マールガ)」

「行為による道(カルマ・マールガ)」

「信愛の道(バクティ・マールガ)」

といった優れた伝統はすべて取り入れ、形骸にすぎないカースト制度を否定した。

 さらに伝統的な宗教儀礼の意味を疑い、これまでの正統的とされる習慣に縛られることなく、自由な立場から布教した。

 一例を挙げれば、当時の上級階層で使われていたサンスクリット語を使わずに、民衆たちの言語であるヒンディー語で教えを説くことで、多くの一般大衆に受け入れられたのである。

 

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