いのちの響き
台風一過後、私の住む青梅の庭では、秋の虫たちが一斉に啼き始めた。
夜中に床に就くと、開け放った窓から、虫たちの音(ね)が宇宙を奏でるように深い夜を満たしていた。
何種類もの命の音の合奏。それは虫が啼くというよりも、大地そのものの音楽だった。
音が鳴っているのではない、いのちが、いのちのなかで、いのちを奏でていた。
それまでは一つ一つの虫の音が、勝手気ままに鳴っていると思っていたが、周りの虫たちのいのちの響きを、彼らは確かに感じながら、絶妙のアンサンブルで自らの音を奏でているのだった。
やがて時間が消え、天地が消え、私も消え、いのちの合奏のみが、いのちの世界に鳴り響いていた。
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