自然エネルギーを求めて(4)――あこがれの薪ストーブ
目の前にあった夢が潰(つい)えたとき、人はそれに代わる新たな夢を追い始める。
そして、その夢をいよいよ具体化するとき、私たちは「経済的な価値」を優先するか、それとも「経済以外の価値」を優先するかという問題に逢着する。
ここで言う「経済以外の価値」とは、「倫理的」価値ということが大きなウエイトを占めるのであるが、ときには「美的」価値が、さらに地縁・血縁というゲマインシャフト的な「ご縁」が決め手となったりする。
以前から、強いあこがれを抱いていた「自然エネルギー」を燃料とした暖房器具のひとつに、リビングで薪を燃やして暖をとる「薪ストーブ」がある。
「薪を燃やす」というと、森林保全に逆行して環境を悪化させるようなイメージを抱く方もいるかもしれない――
しかし薪の燃焼によって排出されるCO2は、樹木の成長過程で吸収する量とほぼ等量であり、一方的にCO2と熱とを排出する石油・石炭などの「化石燃料エネルギー」とは対照的な、「循環型エネルギー」(Circulation Type Energy)なのである。
つまり「薪ストーブ」を利用すれば、CO2の増減に影響を与えないカーボンニュートラルな生活が実現できるのだ。
かつて私は、実はバーモント・キャスティング社(アメリカ)の薪ストーブで「アンコール エヴァーバーン」という製品の導入を検討した時期があった。
しかし、薪ストーブの生活を詳しく研究していくうちに、思い掛けない発見が幾つもあったので、感心を寄せている方のためにその一端を紹介しようと思う。
「薪ストーブ」といえば、燃料は薪である。
調査したところでは、薪ストーブは1束400円~500円ほどの薪を、だいたい1日で3束ほど使うそうだ。
すると1カ月90束で約4万円ほどになる。
ということは、一冬の暖房費だけで約20万円ほどの出費を覚悟する必要があるのだ。
もちろん、自由に薪を採取できる山林があれば、費用は発生しない。
また、森林組合などを通して原木に近い状態で購入すれば、薪も安価に入手できる。
しかし山林から直接採取する場合も、森林組合から購入する場合も、薪作りに使うチェーンソーや斧(オノ)などの道具を調達し、薪を割るための体力と、そのための時間を確保しなければならない。
薪を割る元気があれば問題ないが、時間が思うようにつくれないときや体調がすぐれないときは、ちょっと辛そうである。
さらに重要なことは、「薪を置くスペース」を確保しなければならないのだ。
一冬で450束の薪を燃料として使うとなると、わが家の場合は、畑のスペースか自動車のガレージをあきらめるかしなければ、冬を越せそうにないボリュームである。
しかも、「薪は2年以上乾燥させる」のが理想というから、その倍となる900束(!)ほどの薪を置くスペースが必要となるのだ!
これでは、わが家は経費(薪代)とスペース(土地)の双方から、畑も自動車も手放さなければ憧れの「薪ストーブ」ライフは実現しないかもしれない。
さらに薪ストーブは、シーズンはじめに煙突掃除とストーブのメンテを毎年欠かさずしなければならない。
高い屋根に登るリスクと煤(スス)だらけになるのを覚悟の上で、自分でメンテをすれば材料費だけだが、外注すれば3~4万円ほどかかる。
つまり、薪ストーブを導入するためには――
①「お金」にゆとりがあるか「山林」を持っていること。
②家の近くに薪を置くための「土地」があること。
③薪を割るための「時間」と「体力」があること。
④「掃除」や「メンテ」が苦にならないこと。
⑤煙突のけむりによってご近所迷惑にならない場所に家があること。
ざっとみても、これだけの条件を満たす必要があるのだ。
満たしている条件が、「体力」と「掃除」だけではお話にならないことが、次第にハッキリしてきたのである(^^;
わが家でこれを導入するためには、「定年後の道楽」としてなら家族も納得することだろう。
しかし、学齢期の子供を4人も抱えて、自宅のローンの支払いに追われている現在では、夢のような話だったのかもしれない―― (^^;
しかしながら、上記の条件を満たし、さらに薪ストーブに興味を抱いている方がいらっしゃれば、ぜひチャレンジすることをお勧めしたい。
薪ストーブと同じく、木質燃料を燃焼させて暖をとり、しかも「森」と「地域の産業」と「家庭」とを結ぶ、循環型で地産地消エネルギーの本命とも思われる「ペレットストーブ」についても、折をみて紹介させていただこうと思う。
【お勧めの書籍】
| 固定リンク


コメント