微生物が醸す”新しい文明” (2024,11)
このところ「甘酒」作りにはまっている。きっかけは、ある誌友からの助言だった。彼女は5年ほど前から甘酒を作り始め、いつも冷蔵庫にストックして毎日飲んでいるという。「おかげで風邪一つひいたことがない」と豪語していたが、確かにお肌の色艶もよく、快活でご主人もお元気そうだ。
これに加え、甘酒は「麹(こうじ)菌によって風味が変化し、豊かな味わいがある」と自作の魅力も語ってくれた。吾が家で使っていたヨーグルトメーカーでも簡単に作れることも判った。
さっそく麹菌を買い求め、レシピに従ってご飯とお湯を容器に入れてかき混ぜ、これに水と麹菌を加えて攪拌(かくはん)した上でヨーグルトメーカーにセット。発酵のための温度も時間も設定されているので、ご飯を炊くように簡単だ。9時間ほど寝かしたら甘酒が完成する。
最初の一杯、恐る恐るコップに入れて試飲してみると、いのちが直接いのちに流れ入るような自然な美味しさが全身に広がった。
これまで、寒い季節には市販の甘酒を買ってレンジで温めて飲んでいたが、自宅で発酵させたものは格別で、作り置きして朝食の定番となった。常温でも、冷やしても温めても、ふくよかな香りと工夫と優しい味わいは深まるばかりだ。
免疫力が向上したおかげか夫婦ともに基礎体温が上がり、日々のお通じに加え、諦めていた手足の冷えまで解消したのは意外な効能だった。誌友の皆さんにもぜひ自宅での「甘酒作り」をお勧めしたい。
私たちのカラダは、食べ物のおかげで生かされている。発酵食品は微生物を活用した“ムスビの働き”でもあるのだ。
昨年から自家製のヨーグルトも作り始めたが、その切っ掛けはテレビの報道だった。酪農家が丹精込めて生産した牛乳が、需給のバランスが崩れて生産過剰となったという理由だけで、大量に廃棄されている衝撃的な光景を見たのだ。
そんな折、ある新聞のコラムで、ヨーグルトメーカーを使えば、自宅で牛乳を発酵させて各種のヨーグルトを(安価に)作れることが分かったのである。
遅々とはしているが吾が家でも、自家製の発酵食品のレパートリーが徐々に広がりつつある。今冬は、これまで頂く一方だった「味噌造り」にも挑戦する予定だ。
このような微々たる営みは一見して無力にしか見えないが、身近な微生物や植物を活用した営みが、日々の祈りと共に豊かな生活を育み、そんな基盤に根を下ろしてこそ“新しい文明”は誰も知らないうちに、見えないところから世界の隅々にまで広がるだろう。
11月は各教区で「自然の恵みフェスタ2024」が開催される。世界を覆い尽くしたように見える旧文明の土壌を、微生物たちのように密かに根底から発酵させて、オープン食堂をはじめ、健康的で充実した日時計主義のオーガニックの料理を、クラフトを、音楽を、芸術を、祈りの中から醸し出して馥郁(ふくいく)たる香りとともに“新しい文明”を開花させていきましょう!
| 固定リンク
コメント